以後そいつは、盗難に遭っても帰ってきたり、夏は50℃を超えるテントの中に、冬は雪の橋の下で酷使され、弦はさび、フィレット・指板はすり減って波打ち、トップはふくらんで弦高は上がり・・・。
それはそれは、我が家で一番鳴っているにもかかわらず、ただの思い出オブジェと化していた。
ところが最近フッと思い立ち、ついに行きつけの楽器屋で本格調整・修理をした。
長年苦楽を共にした相棒は、見事によみがえり、なんとも深い、マイナーコードに似合う音でないています。
こいつのように、唯一無二の親友も、良くなって欲しかったのだが・・・。
今も古い相棒は腕の中で静かに鳴っている。